他の人が書かない洋楽レビュー

音楽雑誌を見ても自分の知りたい内容が載っていないので、自分で書いてみました。

ヒューイ・ルイス&ザ ニュース | SPORTS・アルバムガイド

Sports / Huey Lewis&The News  1983

ヒューイ ルイス&ザ ニュースといえば、バック トゥ ザ フューチャーの主題歌2曲と83年の大ヒットアルバムである本盤がよく知られている。

ただ、このアルバムからシングルヒットを連発したた収録曲のほぼ全部がベスト盤に入っている。

だからベスト盤から聴いてしまうと、購入があとまわしになってしまうアルバム、それが「SPORTS」なだ。

 

 そこでヒューイ ルイス&ザ ニュースに興味があるひとはまず「SPORTS」から聴くことをオススメする。

大ヒットアルバムであるし、この曲順ならではの流れもある。

これを聴いてからベスト盤やほかのアルバムに行くのがもっとも選択肢を増やす順序のようにおもう。

実際 ベスト盤だけしか聴かないのはもったいないバンドなのだから。 


80年代ロックを代表する名盤SPORTS

では、「SPORTS」について書いていこう。

取り上げるのは2013年リマスター2枚組。

発売30周年リマスターのことである。

CD1がオリジナルアルバムのリマスター、

CD2がオリジナルアルバム収録曲のライヴテイクを集めたLIVE SPORTSという題目になっている。

以下はCD1 オリジナルアルバムの曲目。

 

Sports Track Listing:

  1. The Heart of Rock & Roll
  2. Heart And Soul
  3. Bad is Bad
  4. I Want A New Drug
  5. Walking On A Thin Line
  6. Finally Found A Home
  7. If This Is It
  8. You Crack Me Up
  9. Honky Tonk Blues

このアルバムは全9曲中、5曲がシングルヒットした特大ヒットアルバム。

アルバムとしても全米1位に登りつめ、その年の年間売上アルバム2位を記録した彼らの出世作として世界的に知られる作品だ。

マイケル・ジャクソンのスリラーがなければ年間アルバム1位だったのは言うまでもない。

前述の通りアルバムからは5曲がシングルカットされ①②④⑦がトップ10入り、残り1曲⑤もトップ20入りしたのだった。

 

アメリカの古めかしい音楽スタイルにモダンなエッセンスと当時の先端テクノロジーをハイブリッドした点が画期的。

ロックンロール、ソウル、リズム&ブルーズ、

ドゥーワップなど50年代のアメリカンミュージックに80'sなサウンドやビートがハネる。

今となってはなんてことはないけれど、かれらはもっとも早い時期にそうした音楽スタイルを完成させた先駆と言える。

実際すごい実績を持つバンドであり、数多のゴールドディスク、プラチナムを獲得している。

ライヴでは高い演奏力とパフォーマンスで下積みの頃から評判だった。

そうしたライヴパフォーマンスのアツさとスタジオワークの緻密さがテクノロジーが発展していた時代のなかでガッチリかみあった奇跡的な1枚。

「SPORTS」は世間がおもう以上にすごいアルバムなのだ。

 このアルバムが硬派な印象があるのは、ポップな中にブルースっぽさがうまく溶け込んでいるからだろう。

その点で他の80年代ロックの中でも異色と言える。

このブルースっぽさがアルバム全体を引き締めてロック色を明確なものにし、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのサウンドを決定的なものにしている。

 

収録された楽曲群は幅が広い。

バンドのオリジナル作品に外部ソングライターの曲②⑤とカヴァー曲⑨を混じえたバランス感覚もオールドスクールで燻し銀なカッコ良さ。

ロックンロールナンバー①から妖しくグリッティなニューウェーブポップ②、

気怠くレイジーなブルースにドゥーワップを絡めた③、

ギターリフとホーンを活かしたバブルガムな④、

ギターを活かしたアメリカンロックな⑤⑥、

ドゥーワップな名曲⑦、

テクノなロックンロール⑧、

ハンク・ウィリアムスの名曲をパプロックに改変した⑨など。

どれもポップとクールネスの混ざり具合が最高の配合だ。

アメリカンロックのさまざまな形を1枚のアルバムの中でこれほど無理なく、それもポップに聴かせ、シングルヒット連発となった作品は稀。

そして演奏、コーラスのうまさにも気付かされるだろう。

サックス、ギターのジョニー・コーラとギターのクリス・ヘイズ、キーボードのショーン・ホッパー、ドラムスのビル・ギブソンによる4声のコーラスはメロディックで、ライブでも見事に再現される。それは本盤の2枚目のCDで確認できる。

演奏面は全員が持ち場を確立しており、スタープレイヤーがいないこのバンドの鉄壁の演奏力を感じさせてくれる。

ザ・カーズもそうだが、両バンドともキーボードサウンドがバンドの核になっているのがおもしろい。

このアルバムでもショーンのキーボードがバンドのカラーになっているのでその点も注目だ。

 

80年代ロックはロクなものがないと一昔前の音楽評論家たちはお決まりのように言っていたが、それは間違いだ。

80年代ロックの名盤を聴けばよくわかる。

このSPORTSもまさにそうした最上級のロックアルバムである。

 

 

リマスターの音質

2006年に出たリマスターベスト盤はオールタイムベストではある反面、シングルエディットが多く収録されており、なにより音質が高音シャキシャキで音圧をガツンと上げました!という当時の流行りの音。

これは好みが分かれるところ。

キンキンした高音で、音圧は強いのに、なんだか迫力がごまかしっぽい。

 

一方 「SPORTS」2013リマスターでは丸みがある音で、音圧もふっくらと強く、各楽器も鮮明。

原音に忠実に音を磨いたとても良い音に仕上がっている。

 

99年にはこのアルバムの20ビットリマスターがセッション アウトテイクとライヴ ヴァージョンを追加してリリースされた。オリジナル マスターからのリマスターだ。マスタリングエンジニアは不明。

マスタリングする前の音のようで、スタジオ内の殺風景な風景がみえてくるような密閉感のあるサウンド

これはこれでおもしろいが。

 

2008年にはEMIミュージックジャパンから日本独自企画のヒューイ ルイス&ザ ニュースリマスターシリーズが出て、「SPORTS」には上とおなじセッションアウトテイクとライヴヴァージョンが追加されていた。

 

2013リマスターの詳細に移ろう。

リマスタリングエンジニアの明確な記載はないが、マスタリングはBob Vosgienがキャピタル マスタリングでおこなっていると記載がある。

オリジナルマスターからのリマスターなのかも記載がないが、これもオリジナルマスターからのリマスタリングだとおもわれる。

99年リマスターがオリジナルマスターからだったのに、デラックス盤で子マスターを使用とは考えにくい。

そしてヒューイとジョニー コーラ、およびバンドの監修でのリマスターであるはずだ。

これはひとえにサウンドからの推測で、前述した黒っぽいサウンドになっていることからバンドの意思がくみとれるのだ。

そう考えると、99年リマスターも日本リマスターも音がオリジナルと大きく異なるのは、バンドが関わっていないからこそだろうと考えられる。

 

本来のサウンドが聴けることも含め、音質、音圧ともに現状「SPORTS」の決定版はこの2013リマスターということになるだろう。

国内盤はSHM CDでリリースされ、海外盤に比べ少し音がスッキリしているように感じる。その分 爽やかだが音が軽い。

海外盤のほうが黒っぽく、音にギュッと芯が詰まっていて日本盤よりずっとロックンロールしている感があった。

 

 

 

CD2は先述の通りライヴテイク集。

Live Sports というタイトルだ。

 

Sports Track Listing:

  1. The Heart of Rock & Roll
  2. Heart And Soul
  3. Bad is Bad
  4. I Want A New Drug
  5. Walking On A Thin Line
  6. Finally Found A Home
  7. If This Is It
  8. You Crack Me Up
  9. Honky Tonk Blues

Live Sports Track Listing:

  1. The Heart Of Rock & Roll
    (live in Cleveland, OH, 1988)
  2. Heart And Soul
    (live in Cleveland, OH, 1988)
  3. Bad Is Bad
    (live in Boston, MA, 1987) 
  4. I Want A New Drug
    (live in Sydney, Australia, 1989)
  5. Walking On A Thin Line
    (live in Chicago, IL, 1983)
  6. Finally Found A Home
    (live in Cleveland, OH, 1988)
  7. If This Is It
    (live in New Orleans, LA, 1986)
  8. You Crack Me Up
    (Recorded live at the Troutfarm 2012)
  9. Honky Tonk Blues
    (Recorded live at the Troutfarm 2012)

ポストプロダクションはメンバーのジョニー コーラがおこなっている。

99年リマスター、2008年リマスター収録のライヴテイクと重複していないのもうれしいところ。

①〜⑦は80年代のライヴテイク。音質も良く、観客の盛り上がりもアツイ。

⑧⑨は2012年に新たにライヴレコーディングしたものだ。

これもクオリティが高く、続けて聴いても違和感が

ないのがライヴバンドとしての実力を示している。

このCD2がなかなか楽しめる1枚となっているだけ

に、こうしたライヴ アーカイヴのオフィシャルリリースも期待したいものである。

 

ライヴを観たことがあるひとならわかるはずだが、かれらは毎回演奏する曲は同じだし、演奏もアドリヴがあるわけでもない。

それでも完成度が高い演奏で聴くヒット曲の魔力には抗うことができない。

その原点が「SPORTS」であり、かれらをスターダムにのしあげたアルバム。

これを聴いて世界中のひとがヒューイ ルイス&ザ ニュースを知ったのだ。

その爆発力はベスト盤では味わうことができないことをわたし自身、このアルバムを愛聴するようになってから知った。

ジャケットのひとなつっこさも含め、このアルバムにしかない魔法を感じれば、ヒューイ ルイス&ザ ニュースはあなたにとっても思い入れの深いバンドのひとつになるだろう。

 

2023 11月 追記

この記事を書いたときはこのSPORTS2枚組は余裕で購入できたのだけど、今見たらもう売っていない。

ホントすぐ廃盤になるよな・・・。

なので代わりに以下の商品を紹介。

日本独自の最新2023リマスターCD2枚組と復刻アナログ盤。

やっぱりこのアルバムはジャケのデザインがいいなあ。

 
 

 

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getmeback.hatenablog.jp

 

 おわり