他の人が書かない洋楽レビュー

音楽雑誌を見ても自分の知りたい内容が載っていないので、自分で書いてみました。

リンゴ スター 名盤タイム テイクス タイム徹底解説

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リンゴ スターとはどういうミュージシャンなのか。
それがよくわかったのが彼のライヴだ。
 
わたしはリンゴの大ファンで2013年からの数度に渡るジャパンツアーはほぼすべて行っているのだが、それは毎回、リンゴのドラミングやバンドとの連携を確認することができるすばらしい機会だった。
 
ライヴに行ってわかったのはリンゴがミュージシャン同士の絆やつながりをつくることのできる稀有なドラマーであること、オーディエンスをノセることができる優秀なドラマー、パフォーマーであることだ。

 

そもそもリンゴの音もハイハットの微妙な開きもシェイキーなビートもスウィングする揺れのノリも まねることができない独自もの。

実際 日本にリンゴ スターみたいにプレイできるドラマーがいたらもっとそのサウンドが主流になっていたのは明らかである。
チャーリー ワッツにしても然り。
やろうとしてもできないという証左がここにあるのだ。
 
リンゴもチャーリーも派手なプレーヤーではない。
それでもリンゴのライヴに行けば、 音楽センスのある若いリスナーはさぞ驚くだろう。
70歳をとうに超えたひとたちのとはおもえないほど、音が若いのだ。
スナップが効いているから音がしっかりハネてくる。
そこらの若いバンドよりずっとロックンロールだ。
だからリンゴをみくびってはいけない。
60年代から今に至るまで活動を続けるとんでもなくタフなロック ドラマーなのだから。
 
 
では、そんなリンゴ スターをはじめて聴くのにはどのアルバムがいいのか。
 
ポップなロックンロールの名盤「TIME TAKES TIME」。
1992年発表のファンにはよく知られたアルバムだ。
セールスはふるわなかったが、その内容の良さから名作として語られる作品である。

 
とにかく全曲メロディがいい。
そして大事なのはこのアルバムがポップスアルバムではないこと。
めちゃくちゃポップなロックンロール・アルバムなのである。
パワーポップがすきなひとは必聴だ。

トニー・ジョー・ホワイト 名盤 HOODOO徹底解説

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トニー ジョー ホワイト2013年の傑作アルバム「HOODOO」。

全編エレクトリック編成でロンサムなスワンプブルーズを決めた南部の香り立つ1枚だ。

アルバムジャケットからして最高にクール。
使い古したストラト、色褪せたアンプリファイア
まさにこのたたずまいがアルバムに密封されている。

 

いつもよりボトムをぐっとさげた重量感のあるサウンド。 
そこにトニージョーの地を這うような低音ヴォーカルがまぎれこむ。
 
そして夜の密林に潜む獣の鳴き声のようなブルーズハープがどこからともなく聞こえてくる。

クリス・レア | シャムロック・ダイアリーズ アルバムガイド

シャムロック・ダイアリーズ / クリス・レア 1985

Chris Rea 1985年のヒット作「Shamrock Diaries」の2019リマスターが2枚組でのリイシューだ。

CD1がオリジナルアルバムのリマスター、
CD2が同時期に出されたシングルB面曲やライヴテイクなどを集めたレアトラックアルバムになっている。

英国ロックの名盤シャムロック ダイアリーズ

本作は彼が人生の岐路を振り返ったアルバムであり、おそらく彼の作品中もっとも英国ロック然としたサウンド、また内省的な作品ではないかとおもう。
霞がかったような淡いサウンドがアルバムのテーマである郷愁を音像化している、内省的でとても叙情味に溢れた1枚だ。


1985年リリース 英15位、その他ヨーロッパ諸国でもヒットを記録。
シングルも好反応を示し、クリスとリスナーの絆がつよくなってきたことがわかる。

同年 Dire Straitsの「Brother’s In Arms」が大成功したように、地味でもいい音楽であれば聴衆に受けるように音楽ファンの好みが変化した。
MTVのビデオクリップの効果も大だったが、
Dire Straitsはアイドル的な容姿を売りにするバンドではなかったし、クリスも音楽性で勝負してきたひとだ。
前々作「Water Sign」がデビュー作以来のヒットを記録し、つづく「Wired To The Moon」も好調を維持。
地道な活動を積み英国でも明確な成果を出したのが本作だった。

「Shamrock Diaries」で描かれた郷愁が、次作 「On The Beach」では追憶というかたちで継がれるので、アルバムとしての連続性がはっきりとあらわれている時期。
洗練されたコードやアレンジのなかに、ふっとブルージーな薫りが立ちこめ、風にながされるように消えていく。
昔ながらの喫茶店に入ったときのなつかしさとコーヒーを飲み終わって店をでるときのような一抹のさみしさがある。
クリスの声はまさにこうしたほろ苦さの表現にふさわしいウィスキーヴォイスだった。
このアルバムがヨーロッパ諸国でヒットしたのも納得できる。

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ジョン レノンのソロが意外と売れなかった本当の理由②

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ジョン レノンのソロが意外と売れなかった本当の理由②

ジョン レノンのソロ作品を聴いて彼のファンになったひとはどれくらいいるんだろう。


つまりビートルズを知らずにジョンのソロ作品から聴いてファンになったひと、という意味だが。

多くのひとはビートルズを聴いてから各人のソロ作品に向かうという流れをとっているようにおもえる。

同世代のひとやビートルズに近い世代のひとたちならなおさらこの時系列になりやすいだろう。

ではいまの若い世代の人たちがビートルズを通らず、いきなりジョンのソロ作品から入ることはあるんだろうか。
当然あるはずだ。
ベスト盤も出ているし、よく知られたクリスマスソングもある。Imagineもあるし、Powet to The Peopleや(Just Like )Starting Overのようなヒットもある。

ではそれで彼らがジョンのファンになるのか。
いつもここで わたしは頷けなくなる。
その要因は彼のソロになってからの声によるものだ。

前回はジョンのソロにおけるセールスが案外地味であった要因1を述べた。
今回はその要因2。
ジョン レノンはソロになってから声が変わったという点である。

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ジョン レノンのソロが意外と売れなかった本当の理由①

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ジョン レノンのソロが意外と売れなかった本当の理由①

ジョン レノンの本格的なソロ活動は1970年から1980年だ。
ビートルズ在籍時にもソロシングルは発表しているので、ビートルズ解散後のソロを本格的ソロ活動と認識すべきだろう。
ビートルズのリーダーとして、当時の若者たちにとってカリスマだった。
そんなジョン レノンがソロになってから商業的人気が下がった。


ビートルズ在籍時の66年頃からジョンの曲はポールの大衆性を持った曲に比べ、硬派なロックファンに受けそうな曲、玄人受けする曲になっていった。
特にWhite Albumに顕著だが。
その作風がソロ以降にも見られるだけで、商業的人気は
そのころから実質変わっていないとする向きもあるかもしれない。


たしかに世間的にみれば、シングル、アルバムとも好成績だけれど、本人もレコード会社も元ビートルズの、それも看板だったミュージシャンのセールスとしては満足していなかったのではないか。
ビートルズでは出すシングル、出すアルバムがほとんど1位だった。
当時はチャート最高位が何位かということがなによりも
重要で、だからこそビートルズは格がちがう存在だったのだ。
チャート最高位が低くても、チャートインした期間が長ければロングヒットとして
リスナーや批評家から認められるというのは、元ビートルにはあてはまらない。


ましてや70年から73年くらいのあいだはポール、ジョージは大ヒットを連発していたし、リンゴも連続のシングルヒット、アルバムが米1位になったりで、実に華々しい。
ジョンはシングル、アルバムともにヒットはしていたが、彼らには及んでいなかったようにおもう。
案外 地味な成績なのだ。
米1位のシングルもジョンの獲得がもっともおそく74年、しかも人気絶頂のエルトン ジョンの客演に
助けられての1位。1位を維持したのは1週間のみ。
チャートでおもうようにふるわない現実がみてとれる。

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スワンプロックとは?トニー・ジョー・ホワイトによる究極の回答。

スワンプロックとはなんなのか。
ひとによって解釈が違っており、ややこしい。


米国南部ロックをひとくくりにスワンプロックと記載する人もいる。
では南部ロックとスワンプロックはなにがちがうのか?
どうも釈然としない。
そこでスワンプロックとは、を決定づけるトニージョーホワイトの回答をあらためてみてみよう。

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クリス・レア | 名盤オン・ザ ・ビーチの魅力を徹底解説

On The Beach / Chris Rea  1986

クリス レアの代表的作品として知られる名盤

オン・ザ・ビーチ

音楽雑誌やネット記事でもクリス レアをマニアックに書いた記事はなかなか見当たらないので自身で書くことにした次第だ。

 

日本では知らない人も多いであろうクリス レアは英国のミュージシャンで、欧州全土で大きな人気を維持するベテラン。

我が国であまり知名度が高くないその理由はヨーロッパ色が強いからではないかと思う。

いうなればユーロ ロックか。

英国ロックとは違って日本人には聴き馴染みがないので慣れがいるのかもしれない。

とは言え、ユーロロックからはなれた聴きやすい曲もたくさんあるひとなので、

聴かず嫌いのひとも多いはずだ。

ブルージーなエッセンスを抽出したポップ、ロックを得意とする一方、ライト&メロウな楽曲も多く、AOR好きにもファンを持つ。

ヨーロッパな陰影に溢れた重いナンバーもあるし、海辺をおもわせるさわやかな曲もこのひとの持ち味だ。

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