トニー・ジョー・ホワイト 名盤 HOODOO徹底解説
トニー ジョー ホワイト2013年の傑作アルバム「HOODOO」。
全編エレクトリック編成でロンサムなスワンプブルーズを決めた南部の香り立つ1枚だ。
アルバムジャケットからして最高にクール。
まさにこのたたずまいがアルバムに密封されている。
いつもよりボトムをぐっとさげた重量感のあるサウンド。
そこにトニージョーの地を這うような低音ヴォーカルがまぎれこむ。
そして夜の密林に潜む獣の鳴き声のようなブルーズハープがどこからともなく聞こえてくる。
トニージョーのスワンプといえばこの密林感。このハープ。
ブルーズとカントリー、フォークとロックが微妙に混ざった独特の音楽成分はこのひとならではの魅力がある。
このいなたい感じがたまらない。
演奏面でもこのアルバムは抜群にかっこいい。
トニージョーのギターをはじめ、隙間をおおきくあけたバンドのプレイ。
そこから生まれるスウィングする横揺れは
トニー ジョー ホワイトのキャリアに通底する特有のグルーヴだ。
ちなみに本作はバンドの調子が最高潮だと感じたトニージョーが、ほぼ一発録りで仕上げた一作。
呼吸がぴったりのドラムス、うなりまくっているベースギター、要所をおさえる老獪なキーボードなど聴きどころがいっぱいだ。
また本作はトニー ジョーのリックが
全編にあふれるギターアルバムでもあるのだ。
カントリーともブルーズともつかない
スワンプが混ざりまくったギターリックが堪能できる。
1曲目のThe Giftからそんなブルージーな
リックが冴えるスワンプ ロックンロール。
つづくHoled Upはコードリフがシャッフルする好曲。
これもロンサムな魅力に溢れていて
実にかっこいい。
ギラギラしたギターサウンドがシカゴブルーズをファンキーにそそのかしたような
Who You Gonna Hoodoo Now ?
おなじく
Alligator Mississippi、Sweet Tooth も
ファンキーにハネるスワンプ ブルーズでリックが満載。
このすこしハネる感じがいかにもトニージョー。
微妙に横揺れがはいったスウィングするグルーヴ感が本当にスタイリッシュで、
トニー ジョー ホワイトがDJに人気があるのもよくわかる。
たとえば隙間をあけたサウンドにリズミックなトニージョーのコードカッティングとリックがフロウする9 Foot Sackにもそうしたグルーヴを感じ取れるんではないかとおもう。
そしてこのアルバムの白眉はなんといってもThe Floodである。
7:30秒にわたってまるで毒ヘビのようなギターを弾いている。
歌詞の内容がまさにルイジアナを襲った洪水のことで、哀感をのせたヴォーカルと強烈なギターが展開される。
長い曲でスローなスワンプブルーズだが、
7:30秒を感じさせない魔力がある。
このアルバムのハイライト、必聴の1曲である。
そして忘れてはならないのはトニー ジョー ホワイトの声の魅力。
生粋のルイジアナ ヴォイスをかわらぬ低音でうめくように、つぶやくように歌う様に色気がただよう。
セクシーでロンサムなヴォーカルが聴ける
アルバムだ。
ファンキーなのに決して暑苦しくないクールなたたずまい。
男臭いブルーズなのに、スタイリッシュ。
これがトニージョーのスワンプ ロックだ。
それはアルバムジャケットにもしっかりあらわれている。
スワンプロック、トニー ジョー ホワイトを
はじめて聴くひとにぜひおすすめしたい。