他の人が書かない洋楽レビュー

音楽雑誌を見ても自分の知りたい内容が載っていないので、自分で書いてみました。

ジョン・レノン | 「心の壁、愛の橋」を鋼のように、ガラスの如く解説。

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心の壁、愛の橋は1974年9月に発表されたジョン レノンにとって二作目の全米1位アルバム。

このブログではアルバムの内容、ジョンのヴォーカル、そしてジョンの演奏面に関してを中心にみていこうとおもう。

 

曲目
01. Going Down On Love
02. Whatever Gets You Thru The Night
  エルトン ジョン参加
03. Old Dirt Road 
  ハリー ニルソン参加
04. What You Got
05. Bless You
06. Scared
07. #9 Dream
08. Surprise Surprise (Sweet Bird Of Paradox) エルトン ジョン参加
09. Steel And Glass
10. Beef Jerky
11. Nobody Loves You (When You're Down And Out)
12. Ya Ya

シングルとなったWhatever Gets You Through The Nightも米1位、#9Dreamは米9位になるなど、アルバム、シングルともヒットを記録。
72年、73年とセールスがおもうようにならなかった時期を脱却し、盛り返した格好。
 
バックを務めたのは以下のメンバー。
 
ドラムス ジム ケルトナー
 
ギター ジェシ エド デイヴィス
 
アコースティックギター エディ モトウ
 
ベース クラウス フォアマン
 
ピアノ ニッキー ホプキンス
 
エレクトリックピアノ ケン アッシャー
 
パーカッション アーサー ジェンキンス
 
ホーン ボビー キーズ スティーヴ マダイオ
    ハワード ジョンソン ロン アプレア
    フランク ヴィカリ
 
ジョン自身はエレクトリックギターやアコースティックギター、ピアノを弾いている。
プロデュースとアレンジはレノンとバンドメンバーである。
 
なおエンジニアはシェリー ヨークス、
オーヴァーダブエンジニアはジミー アイオヴォーン。
 
 
 
 
ジョンのファンキーなロックアルバム
 
73年の「MindGames」、そして本作の二作はどちらもジョンのセルフプロデュース、そしてレノン従来のサウンドから離れた点で共通している。
 
前者は洗練されたサウンドを聴かせ手堅いヒットを記録した。
ただ本人が目論んだほど大きなヒットまでには至らなかったのも事実。シングルもスマッシュヒットにとどまった。
 
そこで本作はシンプルなロックバンドとしての演奏に回帰し、その上に大々的なホーン、そしてパーカッションをフィーチャーする手法を採用。
レノンのそれまでにないファンキーかつキャッチーな印象を演出している。
このあたりはディスコからの影響もあるのだろうが、なによりブラックミュージックへの接近と取れる。
 
収録された曲の多くはR&B的なものであり、
そこにソウルミュージック的なアレンジやロックンロールのエッセンスが混じったもの。
以前のジョンのソロにはこうしたミクスチャーは見られず、もっとストレートな音楽性を出していた。
音楽マニアであったジョンの興味がこの時期ブラックミュージックに傾倒し、それがこうしたミックスにつながったとおもわれる。
よく知られたエピソードとしてWhatever Gets You Through The Nightの元ネタがGeorge McCraeのRock Your Babyであるというものがあるが、ここからも当時のレノンの趣味が伺える。
このRock Your Babyから得たソウルミュージックのインスピレーションが「Walls&Bridges」全体に充満しているのだ。
 

トニー・ジョー・ホワイト | ザ・ビギニングのリマスター盤ガイド

トニージョーホワイト2001年作「THE BEGINNING 」がリイシューされた。
リマスターが施され、1曲をカットし曲順、およびジャケットも変更している。
ファン泣かせだが、旧盤が廃盤なだけに手にしていなかったひとには嬉しいリイシューだろう。
 
本作はトニージョーホワイトのアコースティックギター、ヴォーカル、ハーモニカのみのアコースティック スワンプ アルバムだ。
よく弾き語りアルバムと書いているひとがいるが、リードギターを重ねていたり、純然たる弾き語りではない。
演奏は自身のみという完全ソロアルバムであり、弾き語りに近い雰囲気のアルバムと言うのが正解だ。
 
旧盤は音質がかなりロウ&ドライで、その質感はカセットテープ的に感じたものだ。
それもあってかデモトラックを集めたアルバムのようでもあった。それはそれで魅力だったが。
今回はリマスターで音質がマイルドになり、聴きやすくなった。
また曲順を変更したことで構成が改善されて、アルバムらしさが増した印象だ。
ジャケットのトニージョーホワイトの姿も気取りがなく、まさに等身大のアルバムであることを気づかせてくれる。

ジョン・レノン | マインドゲームスをイマジンに解説。

マインド・ゲームス、邦題ヌートピア宣言は英13位、米で9位を記録したがいささか地味な印象で語られることが多い。

個人としては初めて聴いたジョン レノンのアルバムが本作であり、深い思い入れがある。

けれど聴いた際の印象はヒット曲然とした楽曲もなく地味なもので、大ヒットしなかったアルバムという色合いをつよく感じた。
Mind Gamesがシングルとしても米英ともにTop10に入っていないことにも溜飲を下げた。
ジョンの全ディスコグラフィーを聴いた後に本作の良さを見つけたようにおもう。
 
一方ジョンのファンにはこのアルバムが好きなひとが多いという印象もある。
 
またジョンのソロアルバムの中でメロディのよさという点ではもっとも優れた作品だと感じている。
参加した演奏者のアレンジ力も加わってのことではあるが。
ベースにゴードン エドワーズ
ギターにデヴィッド スピノザ
キーボードにケン アッシャー
ドラムスにジム ケルトナー(一部でリック マロッタ)
サクスフォーンにマイケル ブレッカー
こうした面々による演奏はそれまでのジョンのサウンドより洗練されたものになっている。
 
そんな立ち位置のむずかしいアルバム「Mind Games」を真正面ではなく、すこし違った角度からとらえてみようとするのが本記事の狙うところである。

クリス・レア | ダンシング・ウィズ・ストレンジャーズとポール・サイモン

Dancing With Strangers / Chris Rea  1987

今回はクリス レア1987年のアルバム「ダンシング ウィズ ストレンジャーズ」のアルバムガイド。

2019年に出たリマスター盤についてもふれる。

本盤は世界的ヒットとなったオン ザ ビーチに続いて発表されたアルバムであり、全英2位を記録し、長くチャートにとどまるロングヒットとなった。

シングルとしても、

Let’s Dance 英12位、ニュージーランド2位、米81位(モータウンの社長ベリー ゴーディが気に入ったことからモータウン配給で米国でも発売された。)

Loving You Again 英47位、
Joys Of Christmas 英67位、
Que Sere ニュージーランド36位、ベルギー36位
などヒットを記録している。

 

リマスター盤は2枚組。

ディスク1
1.Joys of Christmas
2.I Can't Dance to That
3.Windy Town
4.Gonna Buy a Hat
5.Curse of the Traveller
6.Let's Dance
7.Que Sera
8.Josie's Tune
9.Loving You Again
10.That Girl of Mine
11.September Blue

ディスク2
1.Yes I Do (B Side)
2.Que Sera (Single Version, Re-Recorded '88)
3.Se Sequi (B Side)
4.I'm Taking the Day Out (B Side)
5.I Can Hear Your Heartbeat (Extended Mix)
6.Loving You Again (Live)
7.Danielle's Breakfast (12" B Side)
8.On the Beach (Summer '88)
9.Rudolph's Rotor Arm (Previously unreleased)
10.Smile (The Christmas EP)
11.Don't Care Anymore (B Side)
12.Que Sera (Down Under Mix)
13.Donahue's Broken Wheel (B Side)
14.Let's Dance (Remix)
15.Josephine (French Re-recorded, B Side)
16.Footsteps in the Snow (The Christmas EP)
17.Driving Home for Christmas (Second version, from 'New Light Through Old Windows')

 

 

クリス本人が「基本的に自分のレコードは聴かないが、このアルバムは別だ。ぼくらが燃えているのがわかるからだ。」とあるように本人も気に入っている作品だ。

 

本作では前作オン ザ ビーチの洗練された作風から大きくはなれたケルト音楽に代表されるアイリッシュトラッド的サウンド、またはブルーズ的なリードギターが目立つ。

それらに80年代のキーボードサウンドを混ぜて現代的にしたことがヒットの要因だろう。

 

 

トラッドは彼らにとって身近なものなのだろうが、本作でアイルランドの伝統音楽の要素を全面に取り入れたのはなぜなのか。

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ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース ベスト盤を買うなら絶対これ。

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Huey Lewis & The News /Huey Lewis & The News  1996

実はこれがヒューイ・ルイス&ザ・ ニュースのベスト盤の中で最高音質。

数ある彼らのベスト盤の中でもっとも見過ごされているが、これがかれらのベスト盤のなかで一番いい音。

そしてたんなるベスト盤ではない。

曲目、音質ともに現状このベスト盤が最良なのだ。

1. The Heart of Rock & Roll - 5:04 
2. Heart and Soul - 4:12 

3. Doing It All for My Baby - 3:37 
4. Do You Believe in Love - 3:28 
5. Trouble in Paradise - 4:32
6. The Power of Love [From Back to the Future] - 3:54 
7. If This Is It - 3:52 
8. Bad Is Bad - 3:47
9. Workin' for a Livin' - 2:39 
10. It's Alright - 3:04 
11. Stuck with You - 4:26 
12. I Want a New Drug - 4:45 
13. 100 Years from Now - 3:46
14. So Little Kindness - 4:14
15. 'Til the Day After - 3:27
16. When the Time Has Come - 4:26

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ヒューイ・ルイス&ザ ニュース | SPORTS・アルバムガイド

Sports / Huey Lewis&The News  1983

ヒューイ ルイス&ザ ニュースといえば、バック トゥ ザ フューチャーの主題歌2曲と83年の大ヒットアルバムである本盤がよく知られている。

ただ、このアルバムからシングルヒットを連発したた収録曲のほぼ全部がベスト盤に入っている。

だからベスト盤から聴いてしまうと、購入があとまわしになってしまうアルバム、それが「SPORTS」なだ。

 

 そこでヒューイ ルイス&ザ ニュースに興味があるひとはまず「SPORTS」から聴くことをオススメする。

大ヒットアルバムであるし、この曲順ならではの流れもある。

これを聴いてからベスト盤やほかのアルバムに行くのがもっとも選択肢を増やす順序のようにおもう。

実際 ベスト盤だけしか聴かないのはもったいないバンドなのだから。 


80年代ロックを代表する名盤SPORTS

では、「SPORTS」について書いていこう。

取り上げるのは2013年リマスター2枚組。

発売30周年リマスターのことである。

CD1がオリジナルアルバムのリマスター、

CD2がオリジナルアルバム収録曲のライヴテイクを集めたLIVE SPORTSという題目になっている。

以下はCD1 オリジナルアルバムの曲目。

 

Sports Track Listing:

  1. The Heart of Rock & Roll
  2. Heart And Soul
  3. Bad is Bad
  4. I Want A New Drug
  5. Walking On A Thin Line
  6. Finally Found A Home
  7. If This Is It
  8. You Crack Me Up
  9. Honky Tonk Blues

このアルバムは全9曲中、5曲がシングルヒットした特大ヒットアルバム。

アルバムとしても全米1位に登りつめ、その年の年間売上アルバム2位を記録した彼らの出世作として世界的に知られる作品だ。

マイケル・ジャクソンのスリラーがなければ年間アルバム1位だったのは言うまでもない。

前述の通りアルバムからは5曲がシングルカットされ①②④⑦がトップ10入り、残り1曲⑤もトップ20入りしたのだった。

 

アメリカの古めかしい音楽スタイルにモダンなエッセンスと当時の先端テクノロジーをハイブリッドした点が画期的。

ロックンロール、ソウル、リズム&ブルーズ、

ドゥーワップなど50年代のアメリカンミュージックに80'sなサウンドやビートがハネる。

今となってはなんてことはないけれど、かれらはもっとも早い時期にそうした音楽スタイルを完成させた先駆と言える。

実際すごい実績を持つバンドであり、数多のゴールドディスク、プラチナムを獲得している。

ライヴでは高い演奏力とパフォーマンスで下積みの頃から評判だった。

そうしたライヴパフォーマンスのアツさとスタジオワークの緻密さがテクノロジーが発展していた時代のなかでガッチリかみあった奇跡的な1枚。

「SPORTS」は世間がおもう以上にすごいアルバムなのだ。

 このアルバムが硬派な印象があるのは、ポップな中にブルースっぽさがうまく溶け込んでいるからだろう。

その点で他の80年代ロックの中でも異色と言える。

このブルースっぽさがアルバム全体を引き締めてロック色を明確なものにし、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのサウンドを決定的なものにしている。

 

収録された楽曲群は幅が広い。

バンドのオリジナル作品に外部ソングライターの曲②⑤とカヴァー曲⑨を混じえたバランス感覚もオールドスクールで燻し銀なカッコ良さ。

ロックンロールナンバー①から妖しくグリッティなニューウェーブポップ②、

気怠くレイジーなブルースにドゥーワップを絡めた③、

ギターリフとホーンを活かしたバブルガムな④、

ギターを活かしたアメリカンロックな⑤⑥、

ドゥーワップな名曲⑦、

テクノなロックンロール⑧、

ハンク・ウィリアムスの名曲をパプロックに改変した⑨など。

どれもポップとクールネスの混ざり具合が最高の配合だ。

アメリカンロックのさまざまな形を1枚のアルバムの中でこれほど無理なく、それもポップに聴かせ、シングルヒット連発となった作品は稀。

そして演奏、コーラスのうまさにも気付かされるだろう。

サックス、ギターのジョニー・コーラとギターのクリス・ヘイズ、キーボードのショーン・ホッパー、ドラムスのビル・ギブソンによる4声のコーラスはメロディックで、ライブでも見事に再現される。それは本盤の2枚目のCDで確認できる。

演奏面は全員が持ち場を確立しており、スタープレイヤーがいないこのバンドの鉄壁の演奏力を感じさせてくれる。

ザ・カーズもそうだが、両バンドともキーボードサウンドがバンドの核になっているのがおもしろい。

このアルバムでもショーンのキーボードがバンドのカラーになっているのでその点も注目だ。

 

80年代ロックはロクなものがないと一昔前の音楽評論家たちはお決まりのように言っていたが、それは間違いだ。

80年代ロックの名盤を聴けばよくわかる。

このSPORTSもまさにそうした最上級のロックアルバムである。

 

 

リマスターの音質

2006年に出たリマスターベスト盤はオールタイムベストではある反面、シングルエディットが多く収録されており、なにより音質が高音シャキシャキで音圧をガツンと上げました!という当時の流行りの音。

これは好みが分かれるところ。

キンキンした高音で、音圧は強いのに、なんだか迫力がごまかしっぽい。

 

一方 「SPORTS」2013リマスターでは丸みがある音で、音圧もふっくらと強く、各楽器も鮮明。

原音に忠実に音を磨いたとても良い音に仕上がっている。

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ルパン三世 | ビター&スウィートな70’Sロック名盤

休日の昼にコーヒーでも飲みながらいい音楽が聴きたいときってないだろうか?

そんなときに愛聴するアルバムがある。

それがこのルパン三世 オリジナル サウンド トラック。

 ロック、ソウル、ジャズ、フュージョンが混じったオトナの名盤だ。

ビター&スウィートな70'sの香りがたまらない。

昼でも夜でもオールタイムで聴けるこの懐の深さは音楽好きにはほんとありがたい。

特に サンディ A ホーン「抱いて、ルパン」はティポップファン必聴のメロウなナイトムードの名曲。

サンドラ ホーンといえば 「ラヴ スコール」だけれど、あわせて聴きたいミッドナイト ラヴソングだ。

 アルバム全体ではブラスを効かせたテーマ曲からロマンティックな曲、ハードにうねるグルーヴが満載。

リズムセクションのファンクっぽさも格別。

そこにメロディアスなオーケストレーションが乗っかるんだからかなりプログレッシブ。

そして多くの曲にルパンやとっつぁん、次元、五右衛門、不二子のセリフが入っている。

これが実にユーモラスで軽妙洒脱。

モダンなカッコよさなのだ。

 もちろん声は山田康雄納谷悟朗小林清志らの面々である。

「流れ者にはオンナはいらねえ」

など名フレーズがいっぱい。

ルパン三世のサントラは数あれど、音楽ファンなら持っていたい一枚。

では内容を見ていこう。

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